IoTを工場にどう活用するか

2019年06月20日

 多くの会社や人々がIoTを工場にどう活用するかについて悪戦苦闘している。私もその一人である。どうして工場へのIoT活用が大きな流れにならないのだろうか。
 昨年のJIMTOF(工作機械見本市)では“つながる工場”ということでFANUCやEdgecross、その他出展している機械と通信しているデモがたくさん出展されていた。最新の機械にはMT ConnectやOPC UAなどの欧米の通信規格機能を搭載してきている。
 現場が期待するIoTからは離れているように思えるのは私だけであろうか。私が知る限りの現場の声として、IoTに期待している課題は次の3つである。

1.機械の稼動中に切子が出ている時間とそうでない時間を知りたい。

生産管理側としては、機械の稼動時間がほしい。稼動時間はイコール資源(リソース)の占有時間である。適切に設備機械の割り付けをして工場全体のスケジュールを管理していくために必要な情報である。
 現場の担当者側からすると、さらに細かく実際に切子を出している時間、即ち加工時間そのものを知りたい。現場としては、与えられた機械設備を24時間という制約の中でもっと有効に使いたいと考えているからである。
 残念ながらパトランプの信号ではそれが分からない。パトランプの信号はNCから出力される制御中の合図電灯であり、機械の稼動時間としては有効であっても加工そのものの時間ではない。こんな簡単な信号ですら取れずに現場の声に応えられていない。

2.機械の非稼動中に人が機械に段取りしている時間だけを知りたい。

 これは相当やっかいな問題である。何故ならば機械からどれだけデータを集めても出てこないからである。今どう解決しているかと言うと、作業者に日報に書いてもらうか作業開始終了のボタンを設置して、作業者にボタンを押してもらっている。この入力された時間がラフであることは周知の事実である。作業者は加工に専念してもらい、IoTを使って作業者の手を煩わせずに段取り時間が取れるとありがたいと現場では思っている。

3. ものを探す時間を減らしたい。

 現場が言う「もの」とは①ワーク(材料)、②工具、③治具、④金型、⑤製品を指す。それぞれの現場や担当者によって探すものに違いがあるものの、この探す時間が結構な手間になっている。
 工作機械を使って加工している現場では工具や治具は担当者任せになっているケースが多い。対策と言えば5Sで整理整頓と張り紙をして注意を喚起する程度である。探すためにどれだけ時間がかかっているかは誰も知らない。データも残されていない。測れないものは改善できないというテーゼからすると、今のままではいつまでたっても改善できないだろう。しかし、今のIoT技術をもってすれば、ものを探す時間を短縮することは解決可能であろう。結論とすれば、難しいAIやIoTでなく現場ですぐに役立つものこそが求められている。次回はこの3つの課題に取り組んだ事例をご紹介しよう。

中島 高英