デジタルツインは日本人に合っている

2020年12月02日

 デジタルツインとはリアルとヴァーチャルを結びつけることである。実はこの2つの世界を結びつける才能を一番持っているのが日本人であることに気づいていない人が多い。そこで今回はデジタルツインの世界の到来は日本にとって絶好のチャンスであることについて話していこう。

デジタルツインとDX(デジタルトランスフォーメーション)の違い

 最近DX(デジタルトランスフォーメーション)について話をする機会が多い。その中で多い質問が「デジタルツイン」と「デジタルトランスフォーメーション」の違いとは何かである。
 一言でいえば、「デジタルツイン」とはリアルとヴァーチャルを結びつけるコンピュータテクノロジー(技術)の用語であり、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」とはデジタルツインを前提とした変容した社会総体を指す言葉である。2つの言葉は対象範囲が違うものでありながら相互に深く関連しているために混乱してしまう。
 私は勝手にDXにより変容した社会総体をSX(ソサエティトランスフォーメーション)と名付けている。

デジタルツインと何か

 デジタルツインは、IoT、AI、ARなどの技術を使ってリアルな物理空間をヴァーチャルな仮想空間に再現する技術である。さらに再現された仮想空間を用いてシミュレートしながら将来の予測まで行える世界のことである。

周回遅れの日本

 日本は周回遅れの位置にあると言われている。その証拠に日本には米国のGAFAや中国のBATHに匹敵する企業がない。しいて上げるとすればソフトバンクと楽天になってしまう。どちらも立派な会社であるが彼らの敵ではない。かつてのホンダやソニーのような夢を持った会社とは格の違いを感じる。この原因はトップリーダーの器の違いによるところにあると見ている。孫正義や三木谷浩史は本田宗一郎や井深大、盛田昭夫よりも金持ちで財産も多いかもしれないが夢とそれを支える純粋な思いでは劣っているように感じる。

まだ間に合う日本

 30数年間ITの世界の端に身を置いてきた者としてひとつだけ言えることは勝ち組も長く続けることは出来ないという過酷な競争こそがこの分野のビジネスである。トップが短い期間で入れ替わる世界であれば日本がトップになることも夢ではない。もちろん、トップを目指すということはレースに参加するという絶対的な条件はつくが。

デジタルツインは日本人に合っている

 デジタルツインはリアルとヴァーチャルの2つの世界を結びつけて、そこから何をするかが重要である。デジタルツインというフェーズは単体のデジタル技術での競争ではない。リアルとヴァーチャルの2つの世界を結びつける力に注目してみると日本人こそこの力を持っている。日本人はすでにその力を伝統文化の中で育んできている。能はその極地と言っていい。能を観劇するには観る側にそれなりの想像力が要求される。観客は舞台の演者が舞う姿を目で見て、耳に聞こえてくる声、笛や鼓の音を融合すると同時に、自分の頭の中でヴァーチャルな舞台を想像しながら見ている。
 リアルとヴァーチャルを結びつける力を持っている日本人はデジタルツインを容易に受入れる力を持っているということだ。

ではどうやって日本人の潜在力を表に出すか

 その答えがコロナウィルス禍の自粛生活の中で答えが見つかった。自分自身の過去の経験というリアルな世界を整理編集し直してみるとその扉から未来の世界が見えてきた。 
 この未来の姿を皆さんに伝えることこそが私のミッションである。次回は「私の中のデジタルツインとは」について話したいと思う。

中島 高英